一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら…釣りを覚えなさい。
作家・開高健が紹介したことで知られる、中国の古諺です(開高の創作という説もあり)。
釣りには、開高のみならず、ヘミングウェイなど、和洋問わず多くの作家が魅せられ、そこから多くの優れた文学作品が生まれてきました。
残念ながら店主自身は子供のころに父親と何度か行った海釣り程度しか経験がないため、語る言葉を持ち合わせていないのですが、それはさておき、この遊戯は文学のみならず服にも多くのアイディアを齎しています。
フィッシングジャケットやベストが、その最たるものでは。
今季のリトゥンバイは、この機能的かつ限定的なスポーツウェアに着目。
独自のフィルターを通してアイディアを重ね、再構築しました。
まずはジャケットからご覧いただきましょう。
ベースにしたのは、いまはなきハンティング&フィッシングウェアブランドMASLAND SPORTSMAN’S CLOTHESの1940年代製フィッシングジャケットです。
もちろん、ただそのまま復刻、とか、素材を上質なものに変えて、といった安易な手法ではなく、構造と文脈を理解したうえでダイナミックな換骨奪胎が行われています。
まず目を引くのが胸元のボアですよね。
MASLANDのジャケットではここにボアでなくツルリとした質感の防水ラバー素材が使われており、BUILT-IN CREELと称されていました。
もちろんこのジャケットのポケットに本物のお魚を入れるのは推奨できませんが、ここにボアを当てるのもまたフィッシングジャケットの文脈に即しているのが面白いところ。
フライフィッシングでは、毛鉤(虫を模した疑似餌)を用いるのですが、この毛鉤、一度濡れてしまうと表面張力を失ってしまい、水に浮かぶことができなくなります。
その対処用として、毛鉤を引っ掛けて乾かすためのムートンパッチと呼ばれる道具が存在します。
すなわちこのポケット、魚籠としての機能をもったポケットと毛鉤乾燥用パーツとしての機能をもったパッチ、それぞれの意味をわざわざ失わせて合体させているわけです。
携行品の少ないシチュエーションであれば、鞄要らずですね。
さて、このジャケットと基本的な形状を共通にしたベストもご用意しました。
ジャケット、ベストともに、主に用いられているのは琵琶晒し染めを施したコットンの生地です。
しっかりとしたハリ、剛性を備えつつ、少し使い込んだような、角の取れた風合いを特徴としています。

すでに街着としても市民権を得ているフィッシングベストですが、さらに都市生活に馴染みやすいというのは言うまでもありませんね。

ジャケット同様、充実したポケットのお陰で、もはや着るバッグです。

さらに派生して、今度は生地も形状も変えた別のフィッシングベストを。
ウールとモヘアをブレンドした、ふわふわのダブルフェイス生地で仕立てられています。
ますます釣りに適していない生地のチョイスではありますが、こちらのほうが一般的なフィッシングベストに近い構造ですかね。
ヨーゼフ・ボイスが着ていたのもこうしたマルチポケットタイプ。

ちなみに、フィッシングベストは、フライフィッシング界のレジェンド、リー・ウルフ(Lee Wulff)氏が考案したと云われています。
1960年代初頭にColumbia Sportsが初めて世に出したと伝えられることもありますが、同社は豊富なバリエーションを開発し、フィッシングベストを世に広めた、という評価が正しいようです。
アメリカン・フライフィッシング博物館の刊行物『The American Fly Fisher』によれば、リー・ウルフは当時の釣り人の服装に不便を感じ、多くのポケットを備えたベストを考案、1932年に自作の一着を完成させました。
当時はベストの上にツイードジャケットを羽織り、ネクタイを締めて…というのが一般的な釣り人のスタイルだったようですから、その発想の革新性は驚異的です。
さて、そうして産声を上げてから100年近くが経過したこのマルチポケットフィッシングベスト、長い歴史の中でさまざまなメーカーが研究、開発を重ねてきたもので、そして基本的に個々の釣り人のスタイルが答えを出すものゆえ、このポケットは絶対にこれ用、といった厳密な雛形やルールがありません。
ですので、このベストについている大小さまざまなポケットも、自分ならどのように使うか、イマジネーションを駆使してみてください。
オープンな形状、と、すべて大きさも形も違いますが、意外と頭の中で整理しやすい配置になっています。

背中のドローコードつきポケットも、何を入れようか、あれこれ考えるだけでワクワクしてきますね。

腰にはフィット感を高めるアジャスタも付属し、兎にも角にも盛りだくさんなデザインです。

それでいて、生地の風合いもあって、ゴチャゴチャとうるさくせず上品にまとめてしまうのがさすがリトゥン。
釣りや、アメカジ的文脈から解放され、構造そのものを堪能できる一着に仕上がっています。
ジャケット、ベスト、ともに、本格的なギアに馴染んでいる釣り愛好家も、ふだん釣りとは縁がない方も、お好きなように愉しくお召しいただければ幸いです。
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Fishig jacket ブラック/ カーキ
FIshing vest ブラック
Multi pocket vest チャコール










































































































