GO WEST! ~ あなたの街のユーフォニカ(大阪篇) 

信じられないことに、来年当店は10年目に突入します(1/25で9周年です)。

それもこれも皆様のお力添えあってこそです。
ほんとうに有難うございます。
その先の10年後もまたこうして皆様方と驚きを共有できれば幸いです。

ただ、さすがに今後もずっと横浜の片隅の小さな町でただ無為にじっとしているだけでは、いつまでも認知度は低いままですし、店主の見聞も拡がりません。

そろそろ新しいことを始めてみたいなア、だんだんとそんな欲が出てきます。

しかしながら、そうはいっても万年零細商店ですからね。
どこかに支店を出して人に任せるとか、そんな景気のいい話になるはずがないでしょう。

であるならば、いっそ店主自身が行商人の如く外に出ればいい、ほんの数日のあいだなら仲町台の店が閉まっていてもきっとだれも気付くまい…

そんなことをボヤボヤと考えていたところ、営業代行のプロとして年柄年中全国各地を廻っている川内主税さん(以前Youtubeに出演させていただきましたので、ご存知の方もいらっしゃいますよね)からご紹介を受けまして、早くもその計画が実現することになりました。

というわけで、1/20~21の2日間、大阪にて期間限定出店致します!

こういうイベントで厄介な問題のひとつが場所探しですが、このたび心斎橋のオーダースーツ店LEGAREさんのご厚意を受けまして、何とプライベートサロンルームを貸していただけることに。

ふだんはこうしてスーツやジャケット、生地などの見本が並んでいるところが、すべて当店の品に入れ替わります。

場所はこちらです。
〒542-0081
大阪府大阪市中央区南船場3-8-14 ACN心斎橋Garden 2F

心斎橋筋商店街のビルの2階でして、外からは様子が見えないものの、この会期中は予約制ではありませんので、どうぞお気軽にお越しください(なお、写真ではシャッターが降りていますが、1階にはLEGAREさんと経営母体を同じくする現代アートギャラリーi GALLERYが入っています)。

出店時間は下記の通りとなります。
1/20(土) 12:00-19:00
1/21(日) 12:00-18:00

会期中は同じフロアでLEGAREさんのドレスシャツ受注会も開催されるとのことですから、そちらも是非ご利用ください。

なお、お支払いにつきましては、
クレジットカード(一括払い)
または
キャッシュレス決済(楽天ペイ、Paypay、メルペイ、d払い、au pay)
のみの対応となります。
予めご了承くださいませ。

言うまでもなく、当店としても、こうして大阪まで行き他店様をお借りするからには、漠然としたラインナップを持ち込むわけにはいきません。

県外出店だからといって色目を使いローカライズを狙うのではなく、あくまで、横浜の店が大阪に出る意味を忘れずに。

ですので、大阪で現在取扱店のないブランドを中心に、「そこでしか見ることができない、そこでしか買えない」をテーマとして品物を厳選していきます。

大阪はじめ関西近郊にお住いで、当店に興味は無きにしもあらず、でも遠すぎてさすがに行けないな、という方もいらっしゃると思います。
この機会に遊びにいらしてくだされば、恐悦至極です。

なお、このイベントに際し、事前準備も必要なため、1/19~21の3日は仲町台の店舗と通販の出荷業務はお休みとさせていただきます(通販のご注文は承ります)

来年の事を言えば鬼が笑うとは云うものの、いまからワクワクが止まりません。
大阪の地で皆様にお会いできること、とても楽しみにしています。


雲まであがれ 天まであがれ ~ KINGSLEY WALTERS STUDIO/ ADDINGTON & BARNET

いわゆる秋冬シーズンが終盤を迎える12月ですが、ここにきて、当店初登場となる素晴らしきニューカマーをご紹介します。

ロンドンを拠点とするKINGSLEY WALTERS STUDIOは、その名の通りデザイナーであるKingsley Waltersが手掛けるレザーブランドです。

彼はもとはジャマイカの人で、首都キングストンで生まれ育ち、11歳の時ときに家族とともにイングランドに移住しました。
爾来、ロンドンをホームタウンとして活動しています。

学校を卒業後、数年シェフとして働き、その後サヴィルロウでテーラリングを学んでいましたが、当時あくまで趣味として自分自身や友人のために小物を作っていたところ、やがて口コミ経由でオーダーメイドの注文を受けるようになり、而して2015年、彼は自身のレザーブランドを発足させることになります。

製品に捺された特徴的なKINGSLEY WALTERS STUDIOのロゴは、凧を模したものです。

彼がジャマイカで過ごした幼き日々、学校が休みになるとマンゴー畑に出かけ、他の子供たちとサッカーをしたり、手作りの凧を使って凧揚げ合戦をしたりして過ごしたそうです。
凧合戦で勝ったチームは、お店で飲み物やパンを買うことができたのだとか。

自身のルーツを考えると、凧を一から手作りしたのがすべての始まりだったと、彼はそう振り返っています。

そうしてブランドのロゴを凧に定め、何年も経ったある日、彼はまだやり方を覚えているかどうか確かめることにしました。
今度はマンゴー畑の上ではなく、ロンドンのパーラメント・ヒルの高いところで。
自身の年齢や場所は変わっても気持ちは変わることなく、凧が空に舞い上がると、昔のように笑っている自分に気がついたそうです。

この物語こそがKINGSLEY WALTERS STUDIOそのものと言えます。
自身のルーツであるジャマイカでの日々、ロンドンでの生活を融合させ、英国の伝統的なハンドクラフト技術を駆使した、手作業によるものづくり。
そのすべての製品は、使い込まれ、時間の経過を経ることで成長し、生涯の友となります。

キングズリーは自身の工房で、革小物からバッグ作りまで、定期的にワークショップを開いています。
「自分のブランドをある程度のレベルまで高めてから、ジャマイカに戻って子供たちとワークショップをやりたいんだ」と彼は云います。
「コミュニティのために何かしたい。誰かが何かをやっているのを見なければ、そこにチャンスがあることに気づかない。子供たちに面白いと思ってもらいたいし、自分にもできることだと思ってもらいたい」。

実にナイスガイですね。

それでは、そんなキングズリー自身の手でつくりだされるレザーバッグをご覧いただくことにしましょう。

まずはA4サイズがすっぽり収まるショルダーバッグ、ADDINGTON。


タンニン鞣しが施された肉厚の一枚革を使った、頑強且つ軽快な鞄です。
ウィスキーブラウンと称されるこの茶色もまたいい雰囲気。

このバッグに限らず、すべての製品は手作業で裁断され、蜜蝋でコーティングした独自の糸で縫製されています。

ショルダーストラップはバックルで長さを調節可能です。

お次は、もう少し小振りのショルダーバッグBARNET。


ちょっと珍しいコの字型の真鍮の留め具が目を惹きます。

銅のリベットで各パーツがしっかりと固定され、耐久性は抜群です。

なお、キングズリーはイングランドのウェスト・ミッドランズのとある鋳物工場で金具のほとんどを調達しています。
ここは1832年に馬具用金具の鋳造所として設立され、現在も変わらず高品質の金具を製造している、彼が全幅の信頼を置く工場です。

バッグに話を戻しますと、こちらも調整可能なショルダーストラップで、実はこの部分のみプチ別注、レギュラーモデルより50cm近く長めに設定されています。

もともとはメッセンジャーバッグ的な具合でかなり短めにたすき掛けするイメージだったようですが、体型やアウターを選ばずに、多くの人多くのシチュエーションに適応すべく、この長さへと変更しています。
こんな無茶ぶりが可能なのも、生産規模が小さい(キングズリー本人がOKならそれでできてしまう)からです。

なお、ADDINGTONもBARNETも、仕切りやポケットのないシンプルな内部となっています。

シンプルで故障の少ない構造、丈夫で使い込むほどに風合いが育っていく革や金具、そして素朴ながらも美しいデザイン。

着目すべきKINGSLEY WALTERS STUDIO、まずはこの2型から、以後どうぞお見知りおきを。

オンラインストアはこちらです→
ADDINGTON ウィスキーブラウン
BARNET ブラック


Roaming sheep in search of the place you’ve never known ~ ASEEDONCLOUD/ Shepherd coat

毎年冬になると旅に出てしまうクマの代わりに動物たちのリーダーを務めなくてはならない少女たちも、その間ずっと森で過ごしているわけではないようです。

蓋し、秋冬は羊飼いにとって決して暇な時期ではありません。

寒くなれば放牧していた羊たちを呼び戻しに行かねばなりませんし、ときに街に出て、必要なものを買い出しに行かねばならないこともあるでしょう。

そんなさまざまなシチュエーションに対応してくれる外套は、まさしく必需品ですね。



Shepherd coat、その名の通り羊飼いのためのコートです。
ちなみに、Shepherdの語は”sheep herder(羊の牧畜民)”を略して生まれたのだとか。

素材は2種類、まずは肉厚のコットン”Fiedstone moleskin”。

今季のASEEDONCLOUDのコレクションの重要なテーマである「魔除け」、そうした行為にまつわる石は、光沢のある黒いものが多いそうで、そうした石を想起させる、深い艶をもった無起毛モールスキンです。

ひじょうに高密度に織られており、頑強で雨風をしのいでくれます。

とはいえ本格的なワークウェアに用いられるそれとは異なり、原料には高級綿であるギザコットンを用いているため、しっかりした剛性とともになめらかな肌触り、優美な質感も備えています。

裏地には生成のコットンツイルを採用(袖裏はすべりのよいポリエステル)し、さらに防風性を高めながら印象を軽く仕上げました。

もう片方はウールポリエステルのブランケット素材”Light blanket”。

先述の頑強そのものなコットンモールスキンとは対照的に、長年使い込んだ毛布のような柔らかい生地です。

とても甘く織られているため、コートの自重で生地が伸び、結果独特のゆらぎが生まれています。

こちらの裏地は、Kigansai shirtにも使用されている、羊飼いの一年が描かれた細畝コーデユロイ。

実に贅沢ですね。

コート自体の形状としては、全体にたっぷりとした分量の生地を使いながらも、ピークトラペルや腰の絞りによって適度にフォーマルな印象を与えるようバランスを整えています。

これなら、羊飼いの子たちが街で過ごすときも、仕事着とは思われないでしょう。

一方で仕事着としての側面もなおざりにされてはおらず、背面のセンターベントは通常より深く切り込まれており、馬に乗るときなどにも対応しています。

見るほどに細やかなデザインワークで、さすがASEEDONCLOUDと唸らされます。

この冬ロングコートをお探しの方には必ずお薦めしたい傑作です。

オンラインストアはこちらです→
ブラック(Fiedstone moleskin)/ ブルーグリーン(Light blanket)


俺嘘ない本当 自分の手でするControl ~ Ithe/ No.70-IO

Itheにとって、この2023年というのはひとつの節目だったのではないでしょうか。

発足時から「見立て」をデザインの礎に置き、主に価値のない古着の構造だけを抜き出し再構築してきた同ブランドも、イザコートを皮切りに、独自企画を主軸に据えるようになりました。

そもそもItheのデザイナーである吉﨑氏は、もとはかなりデザイン性の強いクリエーションを得意としてきた人です。
ゼロベースでのオリジナルの企画ができないはずがなく、あくまでItheのコンセプトとして敢えてしなかっただけですから、60点以上ものサンプリング~再構築を経て、いよいよブランドも次のステージに進むときと考えたのでしょう。

Itheらしさは変えず、あくまでItheとしての新しいデザインを。

そうして生まれたのがこのNo.70-IOです。


これからの時期に重宝する、暖かなフリースのプルオーバー。

厚みを抑えた、毛足の短いイタリア製のフリースは、ビスコースを混ぜることで一般的なそれとはまるで異なる柔らかさ、なめらかな肌触りを生み出しています。

外からは判らないのですがハンドウォーマーポケットに沿って、身頃がメッシュに切り替えられています。
そのため、ポケットの部分が不必要に盛り上がることなく、すっきりしたシルエットが保たれました。

単体で見るとアウトドアっぽい印象を抱くかも知れませんが、着てみるとフリースというよりスタンドカラーのシャツに近い雰囲気になるのだから不思議なものです。

このプルオーバーに限った話ではなくフリースの特性として風は通しますので、冬は防風性の高いコートの中に着るミッドレイヤー的な使い方が向いています。
風さえ防いでしまえば暖かいので、真冬でも重宝しますし、その薄さは春先でも違和感なく適応してくれるはずです。

イザT、イザシャツ、イザコートと、どれもヒットしてはいますが、それでも特別枠であった独自企画。
いよいよそれが特別でなく、「これぞItheの現在地点」と言える日が来ました。

オンラインストアはこちらです


愛のしるし ~ Jens/ DOMIT CARDIGAN

冬の上着の代表格といえばやはりコートですが、基本的な移動手段が自動車だったり、そもそもが暑がりの方にとっては、ややオーバースペックだったりするようです。

さっと脱着できて着丈が長くなく、それでいて防寒性のしっかりしたものを求められるケースは、店頭でも決して少なくありません。

そんな向きにお薦めしたいのが、こちらJensのDOMIT CARDIGAN。



その名こそカーディガンではあっても、ガウンのようなジャケットのような…カテゴリーをなかなか定めづらい服です。

ラムウールの編み生地は柔らかく、

総裏仕様で、かつ袖にまでふっくらとした中綿が仕込まれているため、軽量かつとても暖かい一着となっています。

ボタンが省かれたJensらしいミニマルな前立てですが、付属している共生地のベルトを締めることでしっかりと閉じることができます。

また、このベルトをネクタイのようにあしらうことも可能です。

そのときは、ベルトのずれを防ぐため、うなじ部分に設けられたループに通すことてベルトを固定します。

禁欲的に見えて遊び心も忘れない、このブランドならではの愛嬌のある仕様ですね。

マスタード(という呼び名のオレンジがかったライトブラウン)、ブラック、どちらの色もそれぞれ違った甲乙つけ難い佳さがあります。

女性がたっぷり着るのも可愛いものですが、一般的には男性にちょうどいいくらいのサイズ感です。
まずは店頭にてお試しを。

オンラインストアはこちらです→ マスタード/ ブラック


朝も夜も走り続け 見つけ出した青い光~ .URUKUST

いつも冬が始まるころ、一年を走り抜けたご褒美のように提案される.URUKUSTの限定色。

今年は、上品な群青色です。

ラピスラズリ(瑠璃)を精製した、深みのある青色。
なおラピスラズリの語源は、石を表すラテン語Lapis、青や空を表すペルシャ語Lazwardが合わさったものだとか。

群青色は英語でウルトラマリンと呼ばれますが、これは「超・海っぽい」とかそんなニュアンスではありません。
欧州で原料のラピスラズリが産出されず、アフガニスタンから海を越えてもたらされたことから、この名がついたと云われています。

また、かのフェルメールがこの色の顔料を愛用し、多くの名作を残したことから、フェルメールブルーなんて呼び名もあったりします。

そんな群青をブランドオリジナルの調色でつくり、植物タンニンで鞣した国産のステアオイルドレザーを染めました。

わずかに顔料が入っているため、使い込んだ際にたとえばイタリアのバケッタレザーのようにダイナミックな経年変化はせず、ゆるやかに、しっとりと落ち着いた馴染み方をします。

今回は、定番のキーホルダー、

キーケースに

折財布Bifold Wallet、

長財布Long Wallet。

そして当店では初のご紹介となるCompact Walletが届いています。

収納性より携帯性を重視した設計で、蛇腹状のポケットにはカードと畳んだお札、小銭が収納可能です。
小銭を入れないときはコインポケットをカード入れとしても使えます。

実は以前から幾度もお客様からご要望の声をいただいていたモデルです。
ようやく皆様にお披露目することができました。

店主自身も愛用者として実感を込めて書きますが、美しい色、甘さを抑えながら愛嬌のある形状はもちろんのこと、何よりも道具として使いやすいのが.UTUKUSTの最大の特徴です。
机上のイメージではなく、実際に試作品を手でつくりながら生まれるそのデザイン、この機会に是非お確かめください。

オンラインストアはこちらです→
STK-02 Key Holder
STK-01 Key Case
STW-03 Bifold Wallet
STW-01 Long Wallet
STW-05 Compact Wallet


12月~年始の特別営業日および店休日について

ちらほらと、お客様から年末年始の営業日程についてご質問をいただくようになってきました。
そろそろ告知せねばならない時期ですね。

年末年始ではないのですが、12月は展示会が少ないため、特別営業日も設けます。

つきまして、下記日程は特別スケジュールとなりますので、ご確認くださいませ。

12/6(水) 定休日 → 12:00-18:00
12/20(水) 定休日 → 12:00-18:00
12/27(水) 定休日 → 12:00-18:00
12/30(土) 12:00-20:00 → 臨時休業日
12/31(日) 12:00-20:00 → 臨時休業日
1/1(月) 12:00-20:00 → 臨時休業日
1/2(火) 12:00-20:00 → 臨時休業日
<1/3(水) 定休日>
1/4(木) 12:00-20:00 → 12:00-17:00

12月で上記以外の日は、営業日・定休日ともに平常通りです。
1月は5日以降より平常に戻ります。


オレンジ・ミステリー ~ HAVERSACK/ ヴィンテージメルトンダッフルコート

さて、今年も残すところあと一ヶ月となりました。

今年は暖冬と予報が出てはいましたが、やはりそれなりに寒くはなるようで、「暖冬だから…」といって暖かい衣料が不要というわけではなさそうです。
ましてや猛暑続きの後です、体が暑さに順応しすぎて、気温以上に寒く感じます。

というわけで、結局のところしっかりしたコートは欠かせません。


意外と定番品の少ないHAVERSACKのなかでもここ数年変わらず作り続けられているダッフルコート。
この冬は、見るだけで心弾むようなオレンジ色が登場しています。

ブランドオリジナルのヴィンテージ調メルトンは、じゅうぶんな厚みと高い剛性感を備え、高密度ゆえ防風性に優れています。
一枚仕立てでありながら真冬でも難なく対応してくれるはずです。

この生地のほつれにくい性質を活かし、すべてのパーツは敢えて断ち切りのままで処理され、これが独特のエッジの立った表情を生み出しました。

副資材にも抜かりはありません。
トグルとその他のボタンには、水牛の角が採用されています。

袖付けはダッフルでは珍しいラグランスリーブで、かつ脇にベンチレーションつきのマチ(クライミングパンツの股のような)が設けられました。
通常、ここまでボリュームのある布使いでアームホールが太いと腕を挙げるのに難儀するのですが、その問題を解消してくれています。

フードの縁裏の謎パーツはゴム内蔵のアジャスタです。
これを引いてボタンで固定することで、フードを絞り防寒性を高めることができます。

パッチポケット上部に設けられたスラッシュポケットは貫通式で、内袋も設けられていませんので、ポケットというより切込みと呼んだほうが正しいかも知れません。

寒さの厳しい日、前立てを全部閉めた状態でも、ここから中に着たジャケットやパンツのポケットに手が届き、ものを出し入れすることができます。

こうした服としての完成度の高さにくわえ、HAVERSACKにしては柔和で中性的な雰囲気のAラインゆえに、毎年男女問わずご支持いただいているモデルです。
今年も男性用、女性用をご用意しましたが、メンズサイズはご紹介を前に完売してしまいました。

オレンジは合わせにくいようで意外とそうでもなく、いつもの冬の装いに自然とうれしい変化をもたらしてくれます。
色で躊躇される方も、まずは一度お試しを。

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マイ・エレメント ~ tilt The authentics × Post Production/ Elements for tilt

近年、低価格帯から高価格帯まで、ファッション業界で濫発されるコラボレーション。

それはまさしく玉石混淆でして、アイコニックな特徴が出ればいいんだろう、いやとにかくロゴが並んでいればいいんだろう、などと安易でチープな発想のものもコラボコラボコラボと市場に溢れ、辟易とされている方も多いと聞きます。

しかし本来コラボレーションという行為は、ワクワクするもののはずです。
それぞれの感覚や技術が合わさって、1+1を2にするのではなく3もしくはそれ以上の、単独では成し得なかった結果を出すのが本来の形でしょう。

逆説的な話にはなりますが、単独で素晴らしい仕事ができるブランドが組み合わさってこそ、それがより高い次元で可能となります。

さて、先日から店頭に登場し、不思議な雰囲気を漂させているこのバッグ。

これはtilt The authenticsの今季の〆を飾る、特別な品物です。

ん?tilt?
そう感じた貴方は実に鋭い。

言うまでもなく優れたデザイナーではあるものの、tiltのデザイナーの中津さんは革物に関しては専門家ではありません。

そこで、以前より親交の深いPost Productionの甲斐さんに話を持ち掛け、製作が実現しました。

テーマは、「いくつかの要素が集まってひとつの製品を形づくる」。
まさしくコラボレーション的な発想を、コレボレーションによって為し得たわけです。

基本的な構造としては、レザーストラップに2つの異なるケースが連結するような形となります。

ストラップは英国産のブライドルレザー。

たっぷりと蝋を含ませることで耐久性、耐水性を高めた頑強な革です。
なお、この白く吹いた粉がその蝋でして、使い込むことで(あるいはブラッシングによって)革に再度馴染み、しっとりとした艶を生み出してくれます。

使い始めはかなり硬い革ですが、しだいに柔らかくほぐれてきますので、ご安心を。

ストラップにはギボシを嵌める穴が4つ空けられ、段階的に長さを調節することができます。

大きい方のケース(Case-1と呼ばれます)は、マチのない平べったい形状です。

ブライドルレザーに、イタリアのロ・スティヴァーレ社製バケッタレザーを組み合わせています(どこにどれが使われているかは、粉の有無で判りますね)。

バケッタはブライドルレザー以上に経年変化のはっきりした革です。
使っていくうちにだいぶ柔らかくなり、濡れたような艶が出てきます。

この変化に時差のある革が、時とともにどのようなコントラストを見せてくれるのか、楽しみですね。

なお、サイズとしては、スマートフォンやカードケース、目薬や常備薬などを収めるのにちょうどいい大きさです。

小さい方(Case-2)はまたがらりと表情を変えて、丸くころんとした形。

フランスのアノネイ社製のエンボスレザーを折り畳み、

ギボシひとつでまとめて固定することで、ケースとして成立させています。

こちらは、たばこの箱が収まるくらいのサイズです。

2つのケースはナス環でストラップのリングに連結しているだけですから、当然片方を外して単体で使用することができます。
また、発想を逆転し、カラビナなどを使って新たにほかのケースや小物などをぶら下げてみるのも面白いかも知れません。

まさしく、冒頭で述べたように、1+1を2ではなく、3あるいはそれ以上にできる、そんなコラボレーションという概念を体現化したバッグと言えます。

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あの花が咲いたのは、そこに種が落ちたからで ~ ASEEDONCLOUD/ Kigansai fleece vest

袖がないことから寒々しい印象を抱かれる方も時折いらっしゃいますが、ベストは秋冬に意外なほど重宝するものです。

おなかと背中(とくに腰)を冷やさないだけで体感はまるで変わりますし、袖がないがゆえに重ね着も容易。

あのふたりの少女たちも、きっと冬の森へ向かうときやそこでの生活に役立てていたことでしょう。


この上品なフリース生地は、一般的なポリエステルでなくウール製。

18.5マイクロン(Super100’s)のメリノウールをパイル組織に編み、両面を起毛させることでこの質感をつくりだしました。

軽く柔らかく暖かいだけでなく、見た目以上に伸縮性に富み、ストレスのない着心地となっています。

前の開きはボタンやファスナーではなく、ダッフルコートに使われるようなトグルで留めます。

単体で着るときのみならず、上着のインナーにしたときにも、ここが程よいアクセントとなってくれそうですね。

また、肩やポケットなどには、よく見ると判るくらいにひっそりと刺繍が入っています。

これは綿の葉をモティーフにしているとのこと。

『地理史』で知られる古代ローマの地理学者にして歴史家ストラボンによると、紀元前4世紀ごろセレウコスに使えていたギリシア人メガステネスはその著書『インド誌(Ta Ind1ka)』で、インドには羊毛の咲く木があると述べているそうです(なお、『インド誌』自体はすでに散逸し現存していません)。

こうしたヨーロッパ人の誤解は1000年以上にわたって解けることはなく、貿易によって木綿が流通しはじめた中世になっても、アジアなどには羊の入った実がなる植物Barometzなるものが存在すると云われていました。

なお、現在でも木綿を指すドイツ語”Baumwolle(木の羊毛)”に、その名残が見られます。

ポリエステルでなく羊の毛でつくられたフリースに、羊が生えると誤解されていた綿の刺繍を施し、それを羊飼いの子が着る、そんな羊三昧な物語の成就です。

可愛らしいデザインですが、男性が着ても違和感はなく、そのため男女サイズ共にご用意しました。

ほかほかと、羊気分で冬を迎えていきましょう。

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