そしてあなたは September 秋に変わった ~ Ithe/ No.23-58-F-TP

当店でパンツに於ける不動の定番の一角として多くのお客様に愛されているItheのNo.23-58-F-TP、通称「フィラパン」。

季節ごとに生地を変えながら展開し続けてきたこの名作が、今季も新たな素材を纏ってやってきました。


シボの美しいウールリネンの綾織生地は、温かみを帯びた風合いと適度な保温性・通気性が秋に最適ですね。

1980年代に量販店やスポーツ用品店で販売されていた化繊のトラックパンツ(いわゆるシャカシャカパンツ)をデザインソースにしており、

元ネタでは「F」ロゴの入っていたサイドテープを、本体と共生地にすることで、タキシードの側章のような上品な印象に生まれ変わらせてしまいました。

穿き心地や汎用性に優れているのは言うまでもなく、ほんのわずかにテーパードがかかったシルエットの美しさにも定評があります。

どうしてもついついこのパンツばかり穿いてしまう、とのお声をとても多くいただくモデルです。

まだまだ異様に暑い日が続くようですが、だからこそ気温が下がり少しでも秋めいてくると急に寒さを感じてしまうかも知れません。
秋への備えは、もう始めてもいい頃合いですよ。

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ふりむけばどこかにおぼろな影がある女ですもの ~ mando/ 抜染オンブレチェックオープンカラーシャツ

数多のチェック柄のなかでも、オンブレチェックはユースカルチャー、ストリートカルチャーとの親和性が高く、若々しいイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そのうえで、大人のためのオンブレチェックがあってもいいはずです。

そしてそれは必ずしも殊更に「上質」ばかりを貴ぶ抑制的なものである必要はないでしょう。


どこから話をすればよいのか、兎にも角にも目が覚めるほど美しいシャツです。

うっすらと微起毛がかったレーヨンの生地は、秋に適した程よい厚みで、とろんとしたドレープがそのクオリティを語ります。

美麗な配色のオンブレチェックは、グランジのグの字も聯想させません。

そしてその全面に重ねられたコケティッシュな女性と花のドローイング。

これは単なるプリントではなく、抜染によって描かれています。
乃ち、オンブレチェックの生地の色を抜いてつくりだした柄ということですね。

そのため、柄の部分の肌触りが硬くなったりすることがなく、生地の動きに干渉しません。

色柄の洒脱な感覚と加工技術の高さに定評のあるmandoならではのアイディアです。

円熟とはただ歳月に流され成長を諦めることを意味せず、寧ろフレッシュな感性と研鑽を保たずして成し得ないもの。
mandoの服からは、いつもそれを教えられます。

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昭和えれじい ~ Jens/ SLIT SHIRT

郷愁を誘う生地とソリッドなモダンデザインのマリアージュで人気の高いJensのSLIT SHIRTが、今季も届いています。


意外なことに初登場ですね、オールブラックは。

織り目のユニークなポリエステル生地は、機屋だか工場だかに眠っていた昭和期のデッドストックだそうで、仄かにざらみのある懐かしい肌触りが、幼き日の情景を思い出させます。

そのノスタルジアを現代に上書きするのが、Jensの尖鋭的なデザインです。

はっきりと長さに差のついた前後の着丈、その狭間には品名の由来にもなった深いスリットが官能的に揺らぎます。

広い身幅と呼応するように、直線的に繋がる太い袖。

ワイドなカフスは、ボタンを留めると狭く引き締まり、袖にふんわりとしたボリューム感が生まれます。

付属の紐はとくに使い方が定まってはいませんので、お好きなようにご活用ください。

そのままにするもよし、腰で結んだりしてシャツのシルエットに変化をつけても面白いでしょう。

しっかりと厚みのある生地にくわえ、ボキシーなシルエットですから、シャツとしてのみならず、ちょっとした羽織ものとしても活用できます。
蒸し暑さの残響が残りそうな秋口あたりには、そのような使い方がちょうどよさそうです。

なお、レディース中心のJensですが、このシャツはメンズのM相当とL相当を選んで仕入れています。

「ちょっとデザインが強いかな…」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、意外なほど着やすい一枚ですよ。

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墨染の 蝶もとぶ也 秋の風 ~ HAVERSACK/ 墨染コットンブロードワンピース & ズアーブパンツ

苛烈極まる残暑の日々、皆様如何お過ごしでしょうか。

天気予報では10月まで気温は高いそうで、そういえば去年の10月の名古屋出張も蒸し暑かったのを思い出します。
もう「そういうもの」と割りきっていくしかなさそうですね。

とはいえ、このところは時折秋のそれを感じさせる乾いた風が吹くこともあり、さすがに夏の盛りが続いているわけではなさそうです。

少しずつ、無理のない程度に、少しずつ秋支度を進めていきましょう。

「むせるほど男臭い」などと云われたのも今は昔、近年は年齢を問わず女性からの支持が高まる一方のHAVERSACKから、今季も素敵な新作が続々と届いています。

今回ご紹介するのはシャツワンピースと


ズアーブパンツ。


ともに、表情の陰影が美しい墨染のコットンブロードで仕立てられています。

ブロードといってもやや厚みのある、秋向けの生地です。

バンドカラーのシャツワンピースはフルオープンタイプ。

両脇にはポケットが設けられ、実用面でも手抜かりありません。

腰の切り替えしから下には裏地が当てられ、ハリを増すことでふっくらしたボリューム感を生み出しました。

渋い生地と好対照的な、可憐で清楚なデザインです。

一方のズアーブパンツも、たっぷりと生地を用いてギャザーとプリーツを駆使した設計となっています。

ズアーブ(Zouaves)とは、19世紀~20世紀前半にかけて存在したフランス軍の軽歩兵連隊です。

フランスの植民地だった北アフリカ、主にアルジェリア人やチュニジア人の兵士によって構成され、そのエキゾティシズムに満ちた独特の美麗な装いは、フランスに留まらず、各国に影響を与えました。

ミリタリーウェアとしての役割から解放された現代、彼らの着用したパンツのバルーンシルエットは、その軽やかな穿き心地とシルエットの美しさのみが受け継がれています。

このパンツも、墨染ブロードの陰影が豊かな生地使いによって艶やかに引き立ち、武骨さなど微塵も感じさせません。

先述のワンピースと同じく、生地と構造のハーモニーを堪能できる一本です。

ワンピース、パンツ、どちらも、晩夏から冬の訪れ(おそらく年明けごろになるのではないでしょうか)直前まで大いに活躍するであろうと思われます。

本格的に秋めいてくる前に、まずは一度お試しを。

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めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に ~ MANAVE/ Tuck Collar Shirts

依然として厳しい残暑は続くようですが、夜になれば緑道ではこおろぎがあちこちで鳴いていて、夏の盛りという雰囲気ではなくなってきました。

そして、各ブランドからは着々と秋の新作が届きはじめています。

MANAVEの定番Tuck Collar Shirtsの新色もまた、店頭の彩りとして加わりました。


一昨年からの継続展開モデルではありますが、人気につきすぐに完売してしまうため、今回は欠ける前に改めてご紹介をば。

今シーズンの提案は、上品な紫色のグラフチェック。
一年を通して使いやすい色ながら、とくに秋に出番の増えるであろう茶系の色との相性が抜群です。

このシャツのデザインベースとなっているのは、デザイナーである真鍋氏がフランスの工場で見た特大サイズ(サイズ表記にしてなんと54)のドレスシャツ。

それほどに大きなシャツをカスタムして一般的なサイズにした、というのが設計のベースとなっています。

首回りは襟にタックを入れて周囲を縮め、

長い袖はつまんで畳んで短く。

裾、

コンバーチブル式のカフスは、

短く詰めてパイピング処理したように仕上げられています。

一方、肩幅と身幅はサイズ54相当のまま。

うなじにギャザーを入れ、たっぷりした生地のバランスを整えており、

着丈と裄丈を調整しつつも、サイズ54ならではのボリューム感を活かしたデザインとなっています。

毎度のことながら、まずは着ていただかないことには「こういうこと!」が伝わりにくい服でして、まったく己の文章力を棚に上げて何なんですが、ともかく一度袖を通してみてください。

正直それなりに高額なこのシャツが、どうして入荷のたびに完売するのか、きっとご理解いただけるはずです。

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ATOZ ポップアップイベント開催のおしらせ

新たな才能のきらめきに出会いました。

ATOZ(アトズ)は大阪を拠点とし、規模は小さくとも面白い服を生み出しているブランドです。

ヴィンテージなど古着をサンプリングして…という手法自体は比較的オーソドックスながら、デザイナーが繊維商社出身ということで、とりわけ生地使いに強い特色が感じられます。

もちろんデザイン面でも、土臭いオールドスタイルの「こだわり」に陥ることなく、サンプリング元のエッセンスを巧みに編集し、普遍的かつ垢抜けたロングライフデザインを両立させています。

そのため、一型ごとの設計にはかなりの時間と労力をかけ、一般的なアパレルブランドと異なりコレクションをシーズンで区切ることはせず、年に数型のみのペースで新作を発表。

どれも、「ヴィンテージ」「古着」といった文言がまったく心に響かない人(実は店主もその一人です)でも納得できる、しっかりとしたオリジナリティのある服揃いです。

基本的にはメンズブランドですが、マッチョな作風ではないため、女性でも違和感なくお召しいただけます。

そんなATOZはまだ発足して2年目、いままで大阪より外ではほぼ活動してきませんでしたが、このたび関東でも挑戦してみたいとお声がけいただき、当店にてポップアップイベントを行うこととなりました。

会期は9/13(土)~9/15(月祝)

【新作マッキーノジャケット、イージーパンツの先行受注】
・微起毛リネンキャンバス ジャケット¥49,500/ パンツ¥38,500
微起毛ナイロンポリエステルタフタ ジャケット¥44,000/ パンツ¥33,000
・納期の目安は12月〜1月ごろ

・定番品などの即売
・定番品とデッドストック生地を使用した限定生産品

の2軸でご提案致します。

会期中はデザイナーである吉岡諒馬さんも在店。
服作りの詳細や思いなど、直接お話を伺いながら買い物をお愉しみいただけます。

まだ若いデザイナーです、その可能性をさらに拡げるためにも、どんどん接して話を引き出してみてください。

ご不明点やご質問等ありましたら、お気軽に当店まで。

皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます!

ATOZインスタグラムアカウントはこちら→https://www.instagram.com/aaaattttoooozzzz4

アウト・オブ・ヒア ~ K.ITO/ ラグランスリーブシャツ

連休中日の雨天というものは通常なら悪態のひとつでもつきたくなるものですが、さすがに連日の日照り続きからの久しぶりの雨、おまけに気温も少し落ち着いてくれるとなると、話は別です。

それにしても早いもので、8月ももう中旬になりました。
世間ではお盆やら何やらで帰省されたり旅行に出かけたりしている方も多いご様子。
(ちなみに当店はお盆期間も平常通り営業します)

お盆を過ぎれば、いよいよ仄かに秋の気配が漂いはじめるころです。

近年は9月10月も気温が高く、夏が終わらないなんて声もあるようですが、いえいえそれでも漸う日は短くなり、夜にはこおろぎが鳴きはじめ、木の葉も彩りが薄れ、少しずつ散り始めていきます。
本格的な秋支度とまではいかぬまでも、そろそろ晩夏から初秋を見据えはじめてもいいのではないでしょうか。

シャツとしても、ちょっとした薄手の羽織ものとしても重宝し、暖かすぎずとも季節感は出せる…たとえばK.ITOの定番ラグランスリーブシャツを。

人気の高いウールツイルは新色ネイビーが仲間入り。


そして細畝コーデュロイも新たに加わりました。




もう何度もご紹介しているモデルですので、仕様については手短に説明しますと、

外套と同じような構造、縫製のラグランスリーブが体型をほぼ問わず快適な着心地を生み、

背面の中央に設けられた大胆なプリーツが、ストレートなボックスシルエットを崩すことなく肩甲骨の動きに対応する、

さながら建築のようなストラクチュアルなデザインが実にK.ITOらしいシャツです。

前述の通りシャツとしてはもちろん、Tシャツやタンクトップの上にばさっと羽織っても収まりがよく、シャツジャケットならぬジャケットシャツとでも形容できそうです。

2023年から継続的に展開してきた上等なウールツイルは言うに及ばず、コーデュロイにも唸らされます。

一見するとコーデュロイというよりベルベッティーン(別珍)と見紛うほど畝が細く、微細な起毛が艶やかな陰影を描きます。

シャツ用に織られた薄手の生地で、とても柔らかく、畝の細さもあってコーデュロイと聞いてイメージするようなホッコリした温かな雰囲気はあまり感じられません。

8月は少々厳しいにしても、9月に入りもう少し涼しくなれば、目にも肌にも違和感なくお召しいただけるはずです。

連日の猛暑の反動か、もう夏のことは考えたくないというお客様も少しずつ増えてきていまして、そうした方々からはさっそく店頭でたいへんご好評いただいており、色によってはすでにサイズ欠けも起きています。

メーカー在庫をほぼ持たないブランドでもありますので、気になる方はどうぞお早めに。

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ウールツイル ネイビー
コーデュロイ ブラック/ チャコール/ ネイビー

エヴリデイ・エヴリナイト ~ MEYAME/ EVERYDAY FLARE DENIM

「ふつうのジーンズ」、これが世の中でいくらでもあるようで、意外と見つかりません。

言を俟たず、当店で取り扱うからには「ふつう」であっても最高水準の「ふつう」をクリアすべきなのですが、この「ふつう」の定義さえも、世代やお好み、そして男女でも差があるというのは、10年ほど店を営んでいて痛感するところ。

ジーンズに限った話ではないものの、とりわけジーンズに求める「ふつう」は、だいぶ男女間にギャップがあると感じています。

それはもちろん男性の方が正しいとか女性の方が正しいとかそういう話ではなく、あくまで差異があるというだけのこと。

実際、過去に提案してきたジーンズは圧倒的に男性からの支持が高く(女性も穿けるサイズをご用意していても)、ちょっと行き届いていないなと反省していたのでした。

そこにひょいと現れたのがこちら。


MEYAMEのEVERYDAY FLARE DENIMです。

そもそもが「ずっと手元に残しておきたい服」をブランドコンセプトに掲げているMEYAMEですが、このジーンズをデザインするにあたって、あらためて「毎日穿いてほしい」との願いが込められています。

「毎日穿ける」、言うは易し行うは難しです。

この要件をクリアするには、快適な着心地、高い耐久性が必須なのは言うまでもなく、さらにいえば、余計な要素を足していないというのが重要ではないでしょうか。

どのカテゴリーの服であっても、要素を足せば足すほど、そうでなくともその要素のインパクトが強ければ強いほど、常用に適さなくなります。
いくら美味しくても味が濃くオイリーな料理を毎日食べるとすぐに飽きてしまい、白米のごはんは毎日、何十年食べ続けても飽きないのと同じです。

ポジティブな意味で薄味、旨味はしっかりとある、そんなジーンズだからこそ毎日穿きたくなります。

硬すぎず柔らかすぎない生地、ハードすぎない中古加工。
ウェストにフィットする程よい深さの股上。細すぎず太すぎない、そして広がりすぎないフレアシルエット。
このように細部に至るまで丁寧に中庸が貫かれていながら、ほんの一匙の洒落っ気を加えているからこそ、「ふつう」でありながら「これでいい」ではなく「これがいい」と能動的に選ばれるわけです。

彩度の低いステッチの糸色、軽く錆加工を施したメタルパーツは、色の落ちたデニムの風合いと自然にマッチします。

フライフロントはボタンではなく実用的なジッパー。

裾はカットオフにすることで軽さを生み出しています。

ご覧の通り、デザインされすぎないことはデザインされていないことを意味しません。
ここにあるのは、デザインのにおいを感じさせないデザインです。

フレアシルエットといっても膝からの裾の広がりはごく控えめで、意識して見ないとそうとは気づかない程度に抑えられています。
厭味なく、自然に、脚をすっきりと長く綺麗に見せてくれるシルエットです。

どこをとってもEVERYDAYの名に相応しい一本なのは間違いありません。
その実力を、是非店頭にてお試しください。

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頭文字D ~ KIMURA/ D shirt

実は、KIMURAは今年が活動10年目です。

2016年に発足して以来、世紀の名品narrowing cardigan(シャツカーディガン)を筆頭に、数多くの衝撃的傑作を発表し続けてきました。

「シャツしか発表していないトータルブランド」という謎スタンスも、2023年にまさかのショートパンツが発表され、その後のコートのヒットにより「シャツしか発表していない」と「謎」がとれて、名実ともにトータルブランドになり…かかってきていますね。

オンラインストアやブログなどでの発表を前に完売することもしばしばあって(先週のミコト屋さんでのイベントでも大人気でした)、その勢いは留まるところを知りません。

当店は2017年からのお付き合いでして、その歴史のほとんどをともに歩んできたわけですが、いまもなお新作が出るたびに驚かされます。

このシャツも、一見「え、KIMURAなのにだいぶ普通…?」と思わせて、いやいや想像以上にKIMURA節全開です。

D shirtの“D”は“Dress”の“D”。

すなわち、KIMURA流のドレスシャツです。

KIMURA流というからには、ただ単に「仕立てのよい美しいシャツ」にまとめることはしません。
しかし、いままで以上に「仕立てのよい美しいシャツ」であることは意識されているようです。

それが、手縫いの駆使。

基本的にはほぼミシンで緻密に縫われているのですが、このアームホールをご覧ください。

判りにくいとは思いますので、先に説明してしまいます。
アームホール上部のみ、ステッチが表に出ず袖にギャザーが寄せられていますね。

ここのギャザーの部分のみ、木村さん本人の手縫いです。

もちろん手縫いであることには意味がありまして、これによって優美な印象が生まれるだけでなく、肩の可動域が拡がっています。

手縫い箇所はほかにも。

バックヨークにも細かいギャザーが入り、ふわりとしたやさしい着心地に。

さらに言えば裾脇の三角ガセットも手で縫いつけられています。

この繊細な仕事、ナポリの高級手縫いシャツを彷彿とさせますね。
“D”の名は伊達ではないようです。

それでいてさらにDressであることを追求してしまうのがKIMURA。

ボタンに目を向けてみましょう。

すべてのボタンの糸足に、ごく小さなビーズが通されれています。

たしかに糸足が高くなり、ここに球体の曲線が加わることで脱着は容易になるかも知れませんが…実用的なディテールというより、ロマンのほうが大きそうです。

この手のかかる仕様のためか、替えボタンにもすべてビーズが通されており、不意な脱落にも対応しています。

なお、ボタンの大きさは3種類。
大が前立てとカフス、中が台襟、小が剣ボロ用です。

ついでに申し上げますと、ボタンもすべて手縫いでつけられています。

さらに手縫いの話をさせてください。

肩甲骨に合わせるため、バックヨークの上下の幅がやや狭くなっているのですが、このため縦長のKIMURAネームラベルがヨークからはみ出てしまいます。

そこで、ネームラベルの正面から覗く部分(上部)にはラベルの色に合わせて白を、

後身頃にはみ出ている下部にはボディと同じダークグレーの糸を用いて、手縫いにて玉留めが施されました。

こうすることで、ラベルを縫い留める糸が悪目立ちしません。

研ぎ澄まされた美意識が、こうした細部にも徹底的に貫かれています。

なお、生地はKIMURA別注のフィンクスコットンブロード。
しっとりとした肌触り、適度なハリ、そして木村さんの調色による仄かに赤みを帯びたダークグレーが、実に官能的です。

着用時のシルエットの美しさ、ストレスフリーの着心地に関しては、もう言うまでもありません。
実際に袖を通していただければ、ああだこうだといった説明など不要なはずです。

10年目も安易なルートを選ばず、ただただ求道的に魔の道を歩むKIMURA。
D shirtの“D”は、ひょっとすると“Diabolical”の“D”でもあったりするかも知れませんね。

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