きみとイスまでも ~ beta post/ chair cushion hunting jacket

某英国ブランドの衰えぬ人気もあって、街着としてハンティングジャケットを身に纏うことはすっかり当たり前のファッションとなりました。

しかしながら言うまでもなくハンティングジャケットは市街地を闊歩するためでなく狩猟をサポートするのためのギアであり、湿地や森の中でどのように獲物をとる手助けとなるかを追求してデザインされています。

それが用の美を生み出し、ファッションとして愛されているわけですね。

さて、「獲物をとる」ためのジャケットがあるならば、「休憩をとる」ためのジャケットというものは如何なるものでしょうか。

いえいえ、店主がいきなりおかしくなって、何の脈絡もなく酔狂なことを申し上げているわけではありません。
このジャケットが届いたからなのです。


ハンティングジャケットを下敷きとしながらも、市街地向けにソフィスケートされたこの一着。

高密度に織られたコットンの素材を主に使用し、襟は羊革で、肩はより耐久性の高い生地で補強、

あちこちに設けられたポケットが細々とした身の回りの道具を収め、

軽快かつ快適に都市生活をサポートします。

それだけでもじゅうぶんに魅力的なジャケットですが…そこはbeta post。

先ほどサッと画像を流し見してしまった方も多いでしょうから、もう一度背面をご覧いただきましょうか。

冬向けのジャケットらしく、たっぷりと化繊中綿が詰まった、暖かい背中です。
しかしそれにしても、ダイヤモンド型に配置されたタフティングデザインが、服というよりほかの何かを彷彿させますね。

両脇には深めにファスナーが設けられていますが、これは着用時のシルエットに変化を出す、暑さを逃がすといった役割のほかに、重要な意味を持ちます。

たとえば、チョイと一休みしたいと思ったとしましょう。

そこには椅子があったとして、けれど冬ですから座面が冷たいとか、あるいは単にその椅子の座り心地に不満があるかも知れません。

そんなとき、一度このジャケットを脱いで、背もたれにかけてみては。

先述のファスナーを開放することで、背面下部を座面に流すことができます。

というわけで、ふかふかで暖かな椅子のできあがりです。

これこそ、「休憩をとる」ためのジャケット。
命を奪う行為から、命を長らえさせる行為へ、見事な転化を遂げました。

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HOED 帽子オーダー&即売会開催のおしらせ

昨年に引き続き、HOED冬の帽子オーダー&即売会を開催します。

今回も季節に合わせた魅力的な内容となっていますので、ラインごとにご紹介していきましょう。

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まずは、受注商品から。

【HOED HOMME】

HOMMEは、日常的に使いやすい気軽さと、凛とした清潔な佇まいのバランスが持ち味。
当店ではおなじみの存在ですが、実はHOEDのなかではかなり取扱店の少ない、限定的なラインだったりします。

Sheep suede 6panel cap
PRICE : ¥23,100 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Charcoal Gray/ Gray Navy

【HOED MADE IN JAPAN】

MADE IN JAPANは、オーダーメイドおよびカスタムメイド専門ライン。
ですので、こうしたイベントでのみご紹介できます。

Goat suede 6panel cap
PRICE : ¥24,200 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : 本体色はサンプル帳より約40色から(+ ¥5,500にてコンビ配色も対応可)/ 調整ベルトは3色から選択可

Goat suede 5panel cap
PRICE : ¥24,200 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : 本体色はサンプル帳より約40色から(+ ¥5,500にてコンビ配色も対応可)/ 調整ベルトは3から選択可

どちらも、納期は約1ヶ月です。

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上記オーダー限定品にくわえ、今回は即売商品も充実しています。

Wool 6panel cap
PRICE : ¥19,800 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Navy

Wool 8panel wide beret
PRICE : ¥19,800 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Navy

意外なことにいままで提案されなかった、ウールのキャップとワイドベレーです。
冬にぴったりの雰囲気で、個人的には今回の目玉商品だと思っています。

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その他にも、さまざまなタイプの帽子を即売用に用意していただけることとなりました。

cotton cap / hat
PRICE : ¥12,100 (tax inc.)

leather cap / hat
PRICE : ¥22,000 (tax inc) 〜

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会期は12/13(土)~21(日)です。

なお、12/14はデザイナー在店予定日ですので、本人と直接お話しながらお買い物をということであれば、是非この日にお越しください。

ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず ~ .URUKUST

都筑は鴨の多いところです。

ほとんどはカルガモのため一年中その姿を見ることができますが、冬の間はたまにマガモを見かけることも。

今季の.URUKUSTのシーズン限定色は、そんな都筑の冬にぴったりな、マガモのオスに特有の青緑、すなわちティールブルーです。

植物タンニンで鞣し、べたつきの少ないオイルでさらりと加脂したブランドオリジナルのこの革は、はじめのマットな質感が使い込むごとにしっとりとした艶を帯びてきます。

墨田区の職人さんの手で染められたこの美麗な色がどのように深まっていくのか、楽しみですね。

今季もご用意した型は5種類。

Key Holder(STK-02)、

Key Case(STK-01)、

Compact Wallet(STW-05)、

Bifold Wallet(STW-03)、

そしてLong Wallet(STW-01)。

どれもルックスのみならず使い勝手のよさに定評のある、日常の伴となるべき逸品揃いです。

邪魔にならず、それでいて鍵の存在感を補佐するキーホルダー、キーケース。
最少のアクション、最短距離で目的にたどり着く設計の財布。
どちらも最少のパーツが軽さを、最少の縫製箇所が故障の少なさを実現しています。

それは机上のイメージイラストでなく、実際に手を動かし、何度も試作を重ねた末に辿り着いたデザインだからこそ。

この素晴らしいものづくりを行うブランドがご近所さんというのはまさに僥倖でしたが、実は.UTUKUSTさん、長らく拠点を構えていた都筑の地を離れ、美しい山々に惹かれて長野県へ移転される予定とのこと。
とても寂しい限りです。

とはいえ、もちろんお取り扱いは今後も変わらず継続しますので、どうぞご安心を。

オンラインストアはこちらです→
STK-02 Key Holder
STK-01 Key Case
STW-05 Compact Wallet
STW-03 Bifold Wallet
STW-01 Long Wallet

聖なる夜の贈り物 ~ ASEEDONCLOUD/ Seiyakou inverness coat

ここではないどこかのお話。

人里離れた雪深い場所に大きな一軒家がぽつんと佇んでいます。

とある夫婦がそこで営んでいるのは、ちょっと珍しい学校です。

夫婦は孤児を見つけては招き入れ、そこで彼らを愛情を込めて育てながら、基礎的な勉強のみならず、ソリの乗り方、トナカイの飼育、おもちゃの作り方や煙突の登り方などの「専門的な」教育も施しています。

そんなちょっと風変わりな学び舎で暮らし、カリキュラムを修得した生徒たちは、卒業後、一年で一番闇の長い夜に世界中の子どもたちに夢を与えるべく、冬の夜空を舞う仕事に就くのです。

その生徒たちがさまざまな場面で着ているコートが、このSeiyakou inverness coat。


礼服として、祭服として、そして仕事で使う実用服としても活用できる、マルチな一着です。

デザインのベースとなっているのは、いわゆるインヴァネスコート。

スコットランドのインヴァネス発祥と云われ、その特徴であるケープは、雨天などの過酷な気象でもバグパイプを守り、演奏するためのものだとか。

この機能性が、バグパイプ演奏時に限らず、冷たい雨や雪も想定される冬の夜空の移動にも活きるというわけです。

構造的には袖のないコートに袖つきのケープが重なったつくりになっており、

アームホールや身頃にゆとりを設けていますので、中に何枚も重ねて着込むことができます。

更に寒さが厳しいときは、前立てをすべて閉め、襟を立ててチンストラップを留めてください。

ケープ側のポケットはハンドウォーマーとして、

本体側の大きなパッチポケットはプレゼント収納用として設けられています。

なにせこの仕事、世界中の子どもたちが相手ですから、こうした収納スペースはいくらあってもいいでしょう。

ところで、プレゼントを配るときは、深夜に煙突から忍び込むことも多いため、あまりに繊細な生地だと作業着として役に立ちません。

そこでこのコートに用いられているのは、学生服用のウールポリエステル生地。
養成学校ならではのアイディアです。

この生地に特殊な墨コーティングを施し、洗いをかけています。

こうして一度墨を染み込ませているので、みな煙突のような環境でも灰汚れを気にしなくて済むわけですね。

さて、気がつけばもう今週末で11月が終わります。

聖なる夜も、そんな先の話ではなくなりました。

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恋はお熱く ~ Worker’s Nobility/ ROUND CARDIGAN & HOOD COAT

いつの間にやら、師走の背中が見えていました。

店頭は冬物がほぼ出揃い、冬本番に備えて暖かな上着をお探しのお客様も増えてきています。

しかし物量が多く、ブログの執筆がなかなか追いつきません。
焦りながらキーボードに向かっております。

而して本日ご紹介しますのは、まさにこれからが本番、暖かなボイルドウールを使用したカーディガンと



フードつきコートです。


ボイルドウールはウールの生地を熱湯で煮たりアルカリ溶液(石鹸水など)と熱を加えて縮絨させた生地で、その防寒性の高さ、すぐれた耐久性から、寒冷なチロル地方で伝統的に用いられてきました。

これらに用いられているものはニットを縮絨させているため、フェルトのような見た目に反して伸縮性を備え、着心地がよいのも特長です。

カーディガンは背中に大きなプリーツを入れることで、肩甲骨の可動域を広げ、さらに動きやすくなりました。

機能性のみならず、外見上の意匠としても美しく、着ていて楽しくなる一枚です。

軽快なカーディガンと同素材でありながら、コートはしっかりとした重量感と防寒性を実現しています。

それもそのはず、生地を二重に使っているのですから。

この二重使いは胴部分のみならず袖にまで徹底されており、

ゆえに折り返しても裏地が出ず、自然な雰囲気に。

すなわち、このコートは(もともとフリーサイズ展開ではありますがそのうえで)かなり広い範囲の体型の方に対応してくれます。
背の高い方は袖をそのままに、小柄な方は折り返してしまえばいいというわけです。

カーディガン、コートともにナチュラルな雰囲気の素木ボタンを使用。

独特の平面的カットによる鋭角な印象をソフトに和らげる、Worker’s Nobilityならではのバランス感覚です。

天気予報によると、ことしは12月に寒さが加速的に強まっていく見込みだとか。
身も心も暖めてくれる服が必要ですね。

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ROUND CARDIGAN レッド/ ブラック
HOOD COAT/ ネイビー

きのう 私とキミのこと つないだ糸 ~ comm. arch./ Hand Framed Mohair PO

2020年から冬の定番として毎年展開し続けている名作セーターがあります。

それがcomm.arch.のHand Framed Mohair PO。

生後一歳未満のアンゴラ山羊から採取した稀少なキッドモヘアを使用し、ウールとアルパカを混ぜることで、ふわふわの軽くあたたかい質感を損ねることなく、適度な弾力性も加味されたセーターです。

着用時の可憐な美しさ、空気そのものを身に纏っているかのような軽さ、まったくチクチクしない優しい肌触り、そして気品あふれる色と、およそ求められるすべてを満たし、リピーターの方も少なくありません。

完全に女性用ですが、いやであるがゆえに、男性からも「これは自分も着たい、男性用の形で欲しい」とのお声もチラホラと。

実は弊ブログでのご紹介は2020年以来の2度目になるのですが、それはいつもご紹介を前に巣立ってしまうから。

というわけで、まだ全色お披露目できるうちにとキーボードを叩いています。

果実を思わせる瑞々しさと品の佳さを備えたヴィンテージワイン、

華やかでありながらどこか落ち着いたキャロットオレンジ、

爽やかな軽さをもたらすサックスミント、

冬景色になじむアイスラベンダー、

そしてこのシリーズではちょっと珍しい、シックなブラックアウト。

以上5色が、今年の提案です。

ハンガー掛けの状態だと少々わかりにくいのですが、体を通してみると全体に柔らかな円みが描かれ、長めの袖リブや前後に落差をつけた裾の仕様が、控えめながら確かにシルエットを引き締めます。

当店で女性用セーターの筆頭格として愛され続ける大傑作、まだ未体験の方は是非ともお試しを。

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ヴィンテージワイン/ キャロットオレンジ/ サックスミント/ アイスラベンダー/ ブラックアウト

何の変哲もない愛の歌をうたおう ~ Post Production/ Norm

さて、本日より通常営業に戻りました。

ここ数日ちょっといろいろありまして、普通の日常の有難さをあらためて認識させられているところです。

蓋し「普通」は「普通ではない」ものの対比に過ぎず、必ずしも「つまらない」とか「取るに足りない」を意味しません。
しかしその価値は「普通」ゆえになかなか気づけないものなのかも知れないですね。

それは何も人生論に限らず、靴にしても同様です。

 

Post Produtionの初期からの定番モデルNorm、その名の通りブランドの基準点を目指した、まさに「普通」たらんとする靴ですが、ずいぶんと久しぶりの入荷となりました。

久しぶりすぎて、木型も変わっています。

もともとは鋭角的な、エッジの立ったシルエットでしたが、2024SSからはMonk srtrapと同じPP11C木型を採用。

シルットはやや柔らかい円みを帯び、甲は高く、全体的に厚みが増しました。

踵のカップも大きくなっています。

ですので、足の比較的がっしりした人にお薦めです。

ソールの仕様も変わりました。

以前は歩行性を重視し前足部にハーフラバーが貼られていたところを、ラバーなしのレザーソールにすることですっきりとドレッシーに。

軽く屈曲性に優れたマッケイ製法で縫合され、

ソールの縫い目の出ないヒドゥンチャネルで仕上げられています。

ヒールは一般的な靴よりもやや高めの2.5cm。

こうしてひとつひとつ解説していると「普通」ではないようにも感じてしまいますが、しかし全体をとらえるとたしかに普遍性を備え、ブランドの基準点として相応しい靴と言えます。

ディテールの蘊蓄だけでは掴みきれないデザインの本質がここにありますね。

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