いまは 刻んだ夢を道づれにして 旅に出るがいいさ ~ HAVERSACK/ 高密度シャンブレー スタンドカラーコート

ずっと何も変わることなく定番として愛され続ける服の素晴らしさは言うまでもありませんが、どんどんマイナーチェンジを重ね完成度を高めていく服というのもまた面白いものです。

それはもちろん「前のがダメ」を意味せず、初代の出来栄えがあってこそ次に繋がるわけですし、過渡期のモデルには過渡期ならではの魅力があります。
何かを立てれば何かが下がる、というわけではありません。

このコートも、当店で取り扱うのは初めてですが、ここに至るまで何度マイナーチェンジを重ねたことでしょう。
デザイナー本人をして、ついに「完成形」と呼べるものとなったとか。


大本のデザインソースはスウェーデン軍のモーターサイクルジャケットだそうですが、もはやデザインした当人たちでさえ「原型がどうこうとか意味がなくなった」と感じるほどにオリジナリティ溢れる一着です。

当店が今回仕入れた理由も、「完成形」かどうかでなく、あくまで服そのものを見て判断したうえでのこと。
さて、如何なるコートなのかじっくりとご覧いただきましょう。

生地は高密度に織られた肉厚のコットンシャンブレー。

その耐久性、防風性は言うまでもなく、光の当たり具合で仄かに玉虫のような複雑な色調を見せる、美しい生地です。

実用性のみならず視覚的にも大きな特徴であるポケット。

深い前立てゆえに成り立つサイズと配置です。

この前立ての作り込みにまた唸らされます。

スナップとボタンの二重構造で、襟を立ててすべて閉じることで徹底して冷気の侵入をシャットアウトしてくれます。

さらに、ウールのスライバーニット(繊維を糸状に束ねずそのまま編み立てているニットで、空気の含有量が多いため柔らかく暖かいのが特徴です)のライナーがしっかりと内部を保温します。

なお、このライナーは取り外し可能ですので、真冬以外は外して着てもよいでしょう。

ロングコートはかさばって動きづらい、そんな印象を持たれている方も多いかと思われます。

が、袖下のマチによって、全体的にルーズフィットの構造ながら腕を上げても身頃が引っ張られず、見た目の印象よりも遥かに動きやすいコートです。

使いやすさへの気配りは見れば見るほど驚嘆するばかりで、袖口のカフスはフィット感を高め冷気が入ってくるのを防ぎますが、このカフス、通常のつくりだとボタンを外したときにぶらぶらしてしまいます。

しかし、ガセットを入れることで見事その問題を解決。

強面のようで、とことん着る人のことを考え抜いてデザインされています。

たしかにこれは紛うことなき「完成形」ですね。

若い人から、いままでいろんな服を着倒してきた熟練の紳士まで、自身を持ってお薦めできる逸品です。

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枯れ葉色のクレッシェンド ~ EEL Products/ BROWN DAY COAT

せきれいのみちが鮮やかな紅や黄色に彩られる時間は終わりを告げたようで、気づけば辺りはすっかり枯葉色に染まっていました。

この物悲しく色褪せた茶色が、今年も横浜に冬が訪れたことを教えてくれます。

コートの季節ですね。



EEL Productsの新作BROWN DAY COAT(ブランデーコート)は、その名の通り茶色の情景にあわせてデザインされた外套です。

もちろん見た目だけでなく、現実問題としての寒さや、着心地もじゅうぶんに考慮されており、カシミア混のふんわりした柔らかな生地で仕立てられています。

全面にポリエステルのしっかりした裏地が張られ、防風性も申し分ありません。

暖かいのは言うまでもなく、驚くのがその軽さ。
店頭でも皆様「えっ」と驚かれます。

ジャンルとしてはいわゆるチェスターフィールドコートに該当しますが、この生地の特性のみならず、全体的に円く柔和な雰囲気にまとめられ、オーセンティックなチェスターフィールド特有の硬質なマッチョさは皆無です。

この軽さと優しいデザインゆえ、当店ではメンズサイズはもちろん、女性にもお薦めできるXSサイズもご用意しました。

冬の厳しい寒さと寂寞を趣に変えてしまう、それもまた服の力ですね。

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きみとイスまでも ~ beta post/ chair cushion hunting jacket

某英国ブランドの衰えぬ人気もあって、街着としてハンティングジャケットを身に纏うことはすっかり当たり前のファッションとなりました。

しかしながら言うまでもなくハンティングジャケットは市街地を闊歩するためでなく狩猟をサポートするのためのギアであり、湿地や森の中でどのように獲物をとる手助けとなるかを追求してデザインされています。

それが用の美を生み出し、ファッションとして愛されているわけですね。

さて、「獲物をとる」ためのジャケットがあるならば、「休憩をとる」ためのジャケットというものは如何なるものでしょうか。

いえいえ、店主がいきなりおかしくなって、何の脈絡もなく酔狂なことを申し上げているわけではありません。
このジャケットが届いたからなのです。


ハンティングジャケットを下敷きとしながらも、市街地向けにソフィスケートされたこの一着。

高密度に織られたコットンの素材を主に使用し、襟は羊革で、肩はより耐久性の高い生地で補強、

あちこちに設けられたポケットが細々とした身の回りの道具を収め、

軽快かつ快適に都市生活をサポートします。

それだけでもじゅうぶんに魅力的なジャケットですが…そこはbeta post。

先ほどサッと画像を流し見してしまった方も多いでしょうから、もう一度背面をご覧いただきましょうか。

冬向けのジャケットらしく、たっぷりと化繊中綿が詰まった、暖かい背中です。
しかしそれにしても、ダイヤモンド型に配置されたタフティングデザインが、服というよりほかの何かを彷彿させますね。

両脇には深めにファスナーが設けられていますが、これは着用時のシルエットに変化を出す、暑さを逃がすといった役割のほかに、重要な意味を持ちます。

たとえば、チョイと一休みしたいと思ったとしましょう。

そこには椅子があったとして、けれど冬ですから座面が冷たいとか、あるいは単にその椅子の座り心地に不満があるかも知れません。

そんなとき、一度このジャケットを脱いで、背もたれにかけてみては。

先述のファスナーを開放することで、背面下部を座面に流すことができます。

というわけで、ふかふかで暖かな椅子のできあがりです。

これこそ、「休憩をとる」ためのジャケット。
命を奪う行為から、命を長らえさせる行為へ、見事な転化を遂げました。

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HOED 帽子オーダー&即売会開催のおしらせ

昨年に引き続き、HOED冬の帽子オーダー&即売会を開催します。

今回も季節に合わせた魅力的な内容となっていますので、ラインごとにご紹介していきましょう。

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まずは、受注商品から。

【HOED HOMME】

HOMMEは、日常的に使いやすい気軽さと、凛とした清潔な佇まいのバランスが持ち味。
当店ではおなじみの存在ですが、実はHOEDのなかではかなり取扱店の少ない、限定的なラインだったりします。

Sheep suede 6panel cap
PRICE : ¥23,100 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Charcoal Gray/ Gray Navy

【HOED MADE IN JAPAN】

MADE IN JAPANは、オーダーメイドおよびカスタムメイド専門ライン。
ですので、こうしたイベントでのみご紹介できます。

Goat suede 6panel cap
PRICE : ¥24,200 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : 本体色はサンプル帳より約40色から(+ ¥5,500にてコンビ配色も対応可)/ 調整ベルトは3色から選択可

Goat suede 5panel cap
PRICE : ¥24,200 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : 本体色はサンプル帳より約40色から(+ ¥5,500にてコンビ配色も対応可)/ 調整ベルトは3から選択可

どちらも、納期は約1ヶ月です。

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上記オーダー限定品にくわえ、今回は即売商品も充実しています。

Wool 6panel cap
PRICE : ¥19,800 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Navy

Wool 8panel wide beret
PRICE : ¥19,800 (tax inc.)
SIZE : free
COLOR : Black/ Navy

意外なことにいままで提案されなかった、ウールのキャップとワイドベレーです。
冬にぴったりの雰囲気で、個人的には今回の目玉商品だと思っています。

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その他にも、さまざまなタイプの帽子を即売用に用意していただけることとなりました。

cotton cap / hat
PRICE : ¥12,100 (tax inc.)

leather cap / hat
PRICE : ¥22,000 (tax inc) 〜

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会期は12/13(土)~21(日)です。

なお、12/14はデザイナー在店予定日ですので、本人と直接お話しながらお買い物をということであれば、是非この日にお越しください。

ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず ~ .URUKUST

都筑は鴨の多いところです。

ほとんどはカルガモのため一年中その姿を見ることができますが、冬の間はたまにマガモを見かけることも。

今季の.URUKUSTのシーズン限定色は、そんな都筑の冬にぴったりな、マガモのオスに特有の青緑、すなわちティールブルーです。

植物タンニンで鞣し、べたつきの少ないオイルでさらりと加脂したブランドオリジナルのこの革は、はじめのマットな質感が使い込むごとにしっとりとした艶を帯びてきます。

墨田区の職人さんの手で染められたこの美麗な色がどのように深まっていくのか、楽しみですね。

今季もご用意した型は5種類。

Key Holder(STK-02)、

Key Case(STK-01)、

Compact Wallet(STW-05)、

Bifold Wallet(STW-03)、

そしてLong Wallet(STW-01)。

どれもルックスのみならず使い勝手のよさに定評のある、日常の伴となるべき逸品揃いです。

邪魔にならず、それでいて鍵の存在感を補佐するキーホルダー、キーケース。
最少のアクション、最短距離で目的にたどり着く設計の財布。
どちらも最少のパーツが軽さを、最少の縫製箇所が故障の少なさを実現しています。

それは机上のイメージイラストでなく、実際に手を動かし、何度も試作を重ねた末に辿り着いたデザインだからこそ。

この素晴らしいものづくりを行うブランドがご近所さんというのはまさに僥倖でしたが、実は.UTUKUSTさん、長らく拠点を構えていた都筑の地を離れ、美しい山々に惹かれて長野県へ移転される予定とのこと。
とても寂しい限りです。

とはいえ、もちろんお取り扱いは今後も変わらず継続しますので、どうぞご安心を。

オンラインストアはこちらです→
STK-02 Key Holder
STK-01 Key Case
STW-05 Compact Wallet
STW-03 Bifold Wallet
STW-01 Long Wallet

聖なる夜の贈り物 ~ ASEEDONCLOUD/ Seiyakou inverness coat

ここではないどこかのお話。

人里離れた雪深い場所に大きな一軒家がぽつんと佇んでいます。

とある夫婦がそこで営んでいるのは、ちょっと珍しい学校です。

夫婦は孤児を見つけては招き入れ、そこで彼らを愛情を込めて育てながら、基礎的な勉強のみならず、ソリの乗り方、トナカイの飼育、おもちゃの作り方や煙突の登り方などの「専門的な」教育も施しています。

そんなちょっと風変わりな学び舎で暮らし、カリキュラムを修得した生徒たちは、卒業後、一年で一番闇の長い夜に世界中の子どもたちに夢を与えるべく、冬の夜空を舞う仕事に就くのです。

その生徒たちがさまざまな場面で着ているコートが、このSeiyakou inverness coat。


礼服として、祭服として、そして仕事で使う実用服としても活用できる、マルチな一着です。

デザインのベースとなっているのは、いわゆるインヴァネスコート。

スコットランドのインヴァネス発祥と云われ、その特徴であるケープは、雨天などの過酷な気象でもバグパイプを守り、演奏するためのものだとか。

この機能性が、バグパイプ演奏時に限らず、冷たい雨や雪も想定される冬の夜空の移動にも活きるというわけです。

構造的には袖のないコートに袖つきのケープが重なったつくりになっており、

アームホールや身頃にゆとりを設けていますので、中に何枚も重ねて着込むことができます。

更に寒さが厳しいときは、前立てをすべて閉め、襟を立ててチンストラップを留めてください。

ケープ側のポケットはハンドウォーマーとして、

本体側の大きなパッチポケットはプレゼント収納用として設けられています。

なにせこの仕事、世界中の子どもたちが相手ですから、こうした収納スペースはいくらあってもいいでしょう。

ところで、プレゼントを配るときは、深夜に煙突から忍び込むことも多いため、あまりに繊細な生地だと作業着として役に立ちません。

そこでこのコートに用いられているのは、学生服用のウールポリエステル生地。
養成学校ならではのアイディアです。

この生地に特殊な墨コーティングを施し、洗いをかけています。

こうして一度墨を染み込ませているので、みな煙突のような環境でも灰汚れを気にしなくて済むわけですね。

さて、気がつけばもう今週末で11月が終わります。

聖なる夜も、そんな先の話ではなくなりました。

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恋はお熱く ~ Worker’s Nobility/ ROUND CARDIGAN & HOOD COAT

いつの間にやら、師走の背中が見えていました。

店頭は冬物がほぼ出揃い、冬本番に備えて暖かな上着をお探しのお客様も増えてきています。

しかし物量が多く、ブログの執筆がなかなか追いつきません。
焦りながらキーボードに向かっております。

而して本日ご紹介しますのは、まさにこれからが本番、暖かなボイルドウールを使用したカーディガンと



フードつきコートです。


ボイルドウールはウールの生地を熱湯で煮たりアルカリ溶液(石鹸水など)と熱を加えて縮絨させた生地で、その防寒性の高さ、すぐれた耐久性から、寒冷なチロル地方で伝統的に用いられてきました。

これらに用いられているものはニットを縮絨させているため、フェルトのような見た目に反して伸縮性を備え、着心地がよいのも特長です。

カーディガンは背中に大きなプリーツを入れることで、肩甲骨の可動域を広げ、さらに動きやすくなりました。

機能性のみならず、外見上の意匠としても美しく、着ていて楽しくなる一枚です。

軽快なカーディガンと同素材でありながら、コートはしっかりとした重量感と防寒性を実現しています。

それもそのはず、生地を二重に使っているのですから。

この二重使いは胴部分のみならず袖にまで徹底されており、

ゆえに折り返しても裏地が出ず、自然な雰囲気に。

すなわち、このコートは(もともとフリーサイズ展開ではありますがそのうえで)かなり広い範囲の体型の方に対応してくれます。
背の高い方は袖をそのままに、小柄な方は折り返してしまえばいいというわけです。

カーディガン、コートともにナチュラルな雰囲気の素木ボタンを使用。

独特の平面的カットによる鋭角な印象をソフトに和らげる、Worker’s Nobilityならではのバランス感覚です。

天気予報によると、ことしは12月に寒さが加速的に強まっていく見込みだとか。
身も心も暖めてくれる服が必要ですね。

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ROUND CARDIGAN レッド/ ブラック
HOOD COAT/ ネイビー

きのう 私とキミのこと つないだ糸 ~ comm. arch./ Hand Framed Mohair PO

2020年から冬の定番として毎年展開し続けている名作セーターがあります。

それがcomm.arch.のHand Framed Mohair PO。

生後一歳未満のアンゴラ山羊から採取した稀少なキッドモヘアを使用し、ウールとアルパカを混ぜることで、ふわふわの軽くあたたかい質感を損ねることなく、適度な弾力性も加味されたセーターです。

着用時の可憐な美しさ、空気そのものを身に纏っているかのような軽さ、まったくチクチクしない優しい肌触り、そして気品あふれる色と、およそ求められるすべてを満たし、リピーターの方も少なくありません。

完全に女性用ですが、いやであるがゆえに、男性からも「これは自分も着たい、男性用の形で欲しい」とのお声もチラホラと。

実は弊ブログでのご紹介は2020年以来の2度目になるのですが、それはいつもご紹介を前に巣立ってしまうから。

というわけで、まだ全色お披露目できるうちにとキーボードを叩いています。

果実を思わせる瑞々しさと品の佳さを備えたヴィンテージワイン、

華やかでありながらどこか落ち着いたキャロットオレンジ、

爽やかな軽さをもたらすサックスミント、

冬景色になじむアイスラベンダー、

そしてこのシリーズではちょっと珍しい、シックなブラックアウト。

以上5色が、今年の提案です。

ハンガー掛けの状態だと少々わかりにくいのですが、体を通してみると全体に柔らかな円みが描かれ、長めの袖リブや前後に落差をつけた裾の仕様が、控えめながら確かにシルエットを引き締めます。

当店で女性用セーターの筆頭格として愛され続ける大傑作、まだ未体験の方は是非ともお試しを。

オンラインストアはこちらです→
ヴィンテージワイン/ キャロットオレンジ/ サックスミント/ アイスラベンダー/ ブラックアウト