旅の仲間 ~ written by

writtenafterwardsのデザイナーである山縣良和さんのクリエイティビティの素晴らしさは言を俟たず、しかしときにその才能が、リアルクローズをつくるにあたっては一種の「惑い」に転化してしまうこともあったようです。

そこでセントラル・セントマーティンズ時代から山縣さんをよく知る旧友でもあり、数多くの名だたるブランドを支える裏方のプロとして活躍しているアムステルダム在住デザイナーをパートナーとし、今季より日蘭混成チームにてwritten byを動かしていくこととなりました。

山縣さんの混沌に筋道を設け、リトゥンらしさを損ねることなく、「着る服」としてアウトプットすること。
それは客観的にみるとなかなか困難なテーマですが、その難題を高い次元でクリアしてしまいました。

今回はその最新コレクションから、シャツとブルゾン、パンツをご覧いただきましょう。

まずは比翼仕立てのシャツ。


ボキシーなシルエットを引き立てるハリが強くマットな質感のコットンナイロンツイルで仕立てられつつも、製品洗いによって適度に角の取れた雰囲気となりました。

さらに、胸の大きなポケットや

幅広の袖の剣ボロ、

意図的にピッチを大きくした随所のステッチが、リトゥンらしい愛嬌を生み出しています。

written byのテーマのひとつである「描く」行為をモティーフとした赤いハンドステッチが右袖口にあしらわれ、青みがかった黒のなかで仄かなアクセントとなりました。

お次は、肩の力の抜けた雰囲気のデニムジャケット調ブルゾン。


太い綾目がどことなくユーモラスなコットンツイルは、肉厚なのに柔らかく、どっしりしているのにてろんとした、不思議な質感が面白い生地です。

こちらにも、赤いステッチが。
某デニムブランドのタブを聯想する位置、色ながら、「再現」になっていない匙加減が見事ですね。

なお、ボタンはメタルでもプラスティックでもなく水牛の角を使用しています。

最後に、先述のブルゾンと同素材を用いたパンツを。


生地の特性ゆえ、単体で吊るした状態だとすっきりした形に見えるかも知れませんが、なかなかのワイドシルエットです。

本体と接合されているウェストのベルトにはアジャスターが設けられ、調整&調整という機能の重複に、噛みしめるほど滲みだす妙味があります。

股上深めでボタンフライというのは何やらゴリっとした古着を彷彿させますが、実は意外とアメカジやワークテイストの服も嫌いではない山縣さん、その個人の嗜好性がチラリと見え隠れしているとも言えます。

赤いハンドステッチは左側ヒップポケットのフラップに。

どれも普通のようで普通ではない、ほんの一匙のスパイスが効いたリアルクローズです。
なお、どれもユニセックスでの提案となります。

あまりの着やすい雰囲気に、ひょっとしたら旧来のファンの方は少々動揺されたかも知れませんね。
ご紹介は後日となりますが、従来のリトゥンらしさが色濃いものづくりも並行していますので、クリエーションが「変化」したというよりも「拡張」したとお考えください。

心強い仲間とともに、ここから新生リトゥンの新たな物語が始まります。

オンラインストアはこちらです→
paper like fabric over shirt ブラック
thick twill denim jacket ブラック
thick twill slacks pants ブラック

mando×Euphonica コラボレーションアイテム受注会開催のおしらせ

当店には欠かせぬ基軸のひとつとして、大きな存在感を放つmando。

このブランドの服の特徴はと問われれば、大半の人は「色彩」や「柄」と答えるのではないでしょうか。

もちろんそのどちらも正解なのですが、ここは「形」に着目したいと思います。

mandoの服は、単体で見た印象以上に、実際に着てみるとその美しさに感嘆します。
それは多くのユーザーの皆様もご納得いただけるはずですよね。

そして、これも着てみるとわかるのが、着心地のよさと、実用着としての気楽さ。

「お洒落な大人の服」「プロ好み」といった、たしかにその通りではあるものの、ややもすれば取っつきにくいイメージを抱かれがちなブランドでもありますので、「気楽」といっても実際に着たことがないと意外に思われる方も多いことでしょう。

それは何とも勿体ないことです。

形状が美しく、気兼ねなく着られる、そんなリアルクローズとしての隠れた強みに光を当て、新たな視点でmandoの魅力をより広く伝えたい…というわけでこのたび当店との共同企画により、特別なセットアップが生まれました。



mandoお得意のアンコンジャケットとイージーパンツを、インラインでは使わないような厚みのあるウールポリエステルサージで仕立て、製品洗いを施しています。

独創的な色彩や柄の生み出す圧倒的な洒落っ気を敢えて抑制することで、形状のもつ「粋」を引き出しました。

どちらも単体でも他ブランドやさまざまなテイストの服と組み合わせやすく、日常のなかでmandoの魅力を存分に堪能できます。

洗い加工によって生地の角が取れ程よく柔らかくなり、肩の力の抜けた洒脱な雰囲気が生まれただけでなく、家庭での洗濯が可能となったのも見逃せません。

我ながら会心の出来栄えである(と言いつつも実際に作っているのはmandoですが)このジャケットとパンツを、当店にて受注会という形でお披露目致します。

会期は9/23(火祝)~9/28(日)

当店にてサンプルをご用意し、それを参考にしながらお好みの色、サイズでオーダーいただけます。

サンプルはともにブラックで作っていますが、ジャケットがブラック/ネイビーの2色、パンツがブラック/チャコール/ネイビーの3色と、単品使いのニーズを想定し、パンツにカラーバリエーションをもたせた少々変則的なラインナップとなっております(当日はネイビーとチャコールの生地見本も用意します)。

サイズ展開および寸法は下記の通りです。

ジャケット

Ⅱ 着丈73.5cm 肩幅47cm 袖丈62.5cm バスト112cm ウエスト101cm 裄丈86cm
Ⅲ 着丈75.5cm 肩幅48cm 袖丈64.5cm バスト115cm ウエスト104cm 裄丈88.5cm

パンツ

Ⅰ ウエスト76cm ヒップ113cm 裾幅23cm 股上28.5cm 股下70cm
Ⅱ ウエスト79cm ヒップ116cm 裾幅24cm 股上29cm 股下72cm
Ⅲ ウエスト82cm ヒップ119cm 裾幅25cm 股上29.5cm 股下74cm

気になる価格は
ジャケット ¥63,800(税込)
パンツ ¥39,600(税込)
となります。

オーダーいただいてから生産に入りますので、お渡しは11月下旬~末ごろとなる見込みです。
秋が深まった頃合いから冬に着られるくらいの地厚な生地ですから、ちょうどいいタイミングでのお渡しとなるのではないでしょうか。

すでにmandoユーザーの方も、未体験の方も、きっとご満足いただけるはずです。

是非ともご期待ください!

ATOZポップアップイベント開催中!

昨日9/13より、ATOZのポップアップイベントを開催しております。

新進ブランドと思えぬ高い完成度に、厳しい審美眼をもつ当店のお客様方も、皆様ムムムと唸っていただけているご様子。

デザイナーの吉岡さんも会期を通して終日在店されていますので、その凝りに凝った生地や構造について、是非直接話を訊いてみてください。

イベントは9/15までです。
この機会をどうぞお見逃しなく!

九月の雨は冷たくて ~ THINKWOOL/ TW SHOWERPROOF JACKET & PANTS

幸いにも当店周辺は無事でしたが、地域への警戒アラームが何度も鳴るほどの昨日の大雨、皆様がご無事であることを祈るばかりです。

そして打って変わって本日はまさに台風一過のピーカン。
空模様も気温も浮き沈みが急すぎて、なかなか体がついていきません。

しかしこの勝手気儘な天気こそ、秋の挨拶です。
ちなみに、一年でいちばん雨の多い月は梅雨どきではなく9月なのだとか。

というわけで、この時期はある程度の撥水性を備えた服を用意しておくと重宝します。
そしてまだまだ暑い日が続くとはいえ、昨日がそうだったように天気によっては季節なりに冷えたりしますから、ある程度防風性もしっかりした軽い上着があるとよいですね。

そんなタイミングに合わせ、昨年、ご紹介を前に店頭で早々に巣立ってしまったブルゾンが、今季も届きました。


THINKWOOLならではの、ウール配合のリップストップクロスを用いた、軽快な一着です。

シェルウールと名づけられたこの生地は、経糸にペットボトルを回収して生成されたリサイクルポリエステル糸、緯糸にはメリノウールとリサイクルポリエステル混紡糸を配して高密度に織り上げており、強度が高く、速乾性に優れ、また抗菌消臭性も備えています。

表面にはフッ素をふくまないC-zeroタイプの撥水加工を施しており、本格的なレインウェアとまではいかないまでも、急な小雨程度なら恐れることはありません。

生地の機能性のみに頼らない気配りの利いた設計もこのブルゾンの持ち味です。

襟裏には肌当たりの柔らかい薄手の起毛素材を当て、着心地を高めています。

裾にはドローストリングを通していますので、肌寒い日にも冷気の侵入を防げます。

ハンドポケットはメッシュの内袋にすることでベンチレーションの役割も果たし、またファスナーにより中に入れたものが落ちづらくなっています。

身幅やアームホールに適度なゆとりをもたせており、中にしっかりと着込むこともできます。

重ねる服を変えながら、秋から冬の入口にかけて、そしてもちろん春にも活躍するはずです。

また、春にも入荷した同素材のパンツも再び登場。


2プリーツのスラックス調のデザインながらアウトドアウェアのディテールがひっそりと仕込まれていて、先述のブルゾン同様にハンドポケットはベンチレーション機能を備えたジップ式となっています。

ウェストの内側にはドローストリングが通っているため、ベルトを使わずともしっかりとウェストに固定できます。

なお、店主自身もこのパンツの愛用者でして、昨日も当然のように登板させました。

ある程度の雨を弾き、また濡れてもすぐ乾きますので、天候が不安定で急に大雨になる秋口にはとくに心強い一本です。

すぐれた機能性のみならず、都市着として使いやすい洗練されたデザインで、ブランド指名のリピーターも多いTHINKWOOL。
最近はあまり聞かなくなりましたが、「リアルクローズ」という表現がぴったり当てはまる服ですよ。

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TW SHOWERPROOF JACKET
TW SHOWERPROOF PANTS

そしてあなたは September 秋に変わった ~ Ithe/ No.23-58-F-TP

当店でパンツに於ける不動の定番の一角として多くのお客様に愛されているItheのNo.23-58-F-TP、通称「フィラパン」。

季節ごとに生地を変えながら展開し続けてきたこの名作が、今季も新たな素材を纏ってやってきました。


シボの美しいウールリネンの綾織生地は、温かみを帯びた風合いと適度な保温性・通気性が秋に最適ですね。

1980年代に量販店やスポーツ用品店で販売されていた化繊のトラックパンツ(いわゆるシャカシャカパンツ)をデザインソースにしており、

元ネタでは「F」ロゴの入っていたサイドテープを、本体と共生地にすることで、タキシードの側章のような上品な印象に生まれ変わらせてしまいました。

穿き心地や汎用性に優れているのは言うまでもなく、ほんのわずかにテーパードがかかったシルエットの美しさにも定評があります。

どうしてもついついこのパンツばかり穿いてしまう、とのお声をとても多くいただくモデルです。

まだまだ異様に暑い日が続くようですが、だからこそ気温が下がり少しでも秋めいてくると急に寒さを感じてしまうかも知れません。
秋への備えは、もう始めてもいい頃合いですよ。

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ふりむけばどこかにおぼろな影がある女ですもの ~ mando/ 抜染オンブレチェックオープンカラーシャツ

数多のチェック柄のなかでも、オンブレチェックはユースカルチャー、ストリートカルチャーとの親和性が高く、若々しいイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そのうえで、大人のためのオンブレチェックがあってもいいはずです。

そしてそれは必ずしも殊更に「上質」ばかりを貴ぶ抑制的なものである必要はないでしょう。


どこから話をすればよいのか、兎にも角にも目が覚めるほど美しいシャツです。

うっすらと微起毛がかったレーヨンの生地は、秋に適した程よい厚みで、とろんとしたドレープがそのクオリティを語ります。

美麗な配色のオンブレチェックは、グランジのグの字も聯想させません。

そしてその全面に重ねられたコケティッシュな女性と花のドローイング。

これは単なるプリントではなく、抜染によって描かれています。
乃ち、オンブレチェックの生地の色を抜いてつくりだした柄ということですね。

そのため、柄の部分の肌触りが硬くなったりすることがなく、生地の動きに干渉しません。

色柄の洒脱な感覚と加工技術の高さに定評のあるmandoならではのアイディアです。

円熟とはただ歳月に流され成長を諦めることを意味せず、寧ろフレッシュな感性と研鑽を保たずして成し得ないもの。
mandoの服からは、いつもそれを教えられます。

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昭和えれじい ~ Jens/ SLIT SHIRT

郷愁を誘う生地とソリッドなモダンデザインのマリアージュで人気の高いJensのSLIT SHIRTが、今季も届いています。


意外なことに初登場ですね、オールブラックは。

織り目のユニークなポリエステル生地は、機屋だか工場だかに眠っていた昭和期のデッドストックだそうで、仄かにざらみのある懐かしい肌触りが、幼き日の情景を思い出させます。

そのノスタルジアを現代に上書きするのが、Jensの尖鋭的なデザインです。

はっきりと長さに差のついた前後の着丈、その狭間には品名の由来にもなった深いスリットが官能的に揺らぎます。

広い身幅と呼応するように、直線的に繋がる太い袖。

ワイドなカフスは、ボタンを留めると狭く引き締まり、袖にふんわりとしたボリューム感が生まれます。

付属の紐はとくに使い方が定まってはいませんので、お好きなようにご活用ください。

そのままにするもよし、腰で結んだりしてシャツのシルエットに変化をつけても面白いでしょう。

しっかりと厚みのある生地にくわえ、ボキシーなシルエットですから、シャツとしてのみならず、ちょっとした羽織ものとしても活用できます。
蒸し暑さの残響が残りそうな秋口あたりには、そのような使い方がちょうどよさそうです。

なお、レディース中心のJensですが、このシャツはメンズのM相当とL相当を選んで仕入れています。

「ちょっとデザインが強いかな…」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、意外なほど着やすい一枚ですよ。

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墨染の 蝶もとぶ也 秋の風 ~ HAVERSACK/ 墨染コットンブロードワンピース & ズアーブパンツ

苛烈極まる残暑の日々、皆様如何お過ごしでしょうか。

天気予報では10月まで気温は高いそうで、そういえば去年の10月の名古屋出張も蒸し暑かったのを思い出します。
もう「そういうもの」と割りきっていくしかなさそうですね。

とはいえ、このところは時折秋のそれを感じさせる乾いた風が吹くこともあり、さすがに夏の盛りが続いているわけではなさそうです。

少しずつ、無理のない程度に、少しずつ秋支度を進めていきましょう。

「むせるほど男臭い」などと云われたのも今は昔、近年は年齢を問わず女性からの支持が高まる一方のHAVERSACKから、今季も素敵な新作が続々と届いています。

今回ご紹介するのはシャツワンピースと


ズアーブパンツ。


ともに、表情の陰影が美しい墨染のコットンブロードで仕立てられています。

ブロードといってもやや厚みのある、秋向けの生地です。

バンドカラーのシャツワンピースはフルオープンタイプ。

両脇にはポケットが設けられ、実用面でも手抜かりありません。

腰の切り替えしから下には裏地が当てられ、ハリを増すことでふっくらしたボリューム感を生み出しました。

渋い生地と好対照的な、可憐で清楚なデザインです。

一方のズアーブパンツも、たっぷりと生地を用いてギャザーとプリーツを駆使した設計となっています。

ズアーブ(Zouaves)とは、19世紀~20世紀前半にかけて存在したフランス軍の軽歩兵連隊です。

フランスの植民地だった北アフリカ、主にアルジェリア人やチュニジア人の兵士によって構成され、そのエキゾティシズムに満ちた独特の美麗な装いは、フランスに留まらず、各国に影響を与えました。

ミリタリーウェアとしての役割から解放された現代、彼らの着用したパンツのバルーンシルエットは、その軽やかな穿き心地とシルエットの美しさのみが受け継がれています。

このパンツも、墨染ブロードの陰影が豊かな生地使いによって艶やかに引き立ち、武骨さなど微塵も感じさせません。

先述のワンピースと同じく、生地と構造のハーモニーを堪能できる一本です。

ワンピース、パンツ、どちらも、晩夏から冬の訪れ(おそらく年明けごろになるのではないでしょうか)直前まで大いに活躍するであろうと思われます。

本格的に秋めいてくる前に、まずは一度お試しを。

オンラインストアはこちらです→ バンドカラーワンピース/ ズアーブパンツ